2006年03月03日

01.レジェンドその1

私はローラ王国の第2王子、レジェンド・ミラ・ルイザス。現在は故あって王位継承順位が1位にされている。が、それも今のうちの話で、いずれは兄が王国に帰っていらっしゃるだろう。
が…、事態はそれを待ってはくれない。ローラ王国は同盟国の他の3国と南の大国統一ラオスと長期の戦争中だ。もともとこの5つの国はこのローレシア大陸を統一する巨大な王国だった。が当時の最高将軍が反乱、その混乱の中、巨大な王国は分裂し現在の様子となったのだが…。流石に軍を掌握した統一ラオスは強く、大陸の南半分を支配した。そこで他の4国は同盟しそれに対抗する事になった。驚異は統一ラオスだけでは無い。北にある大陸の南半分も長い間戦争のただ中にあり、何時ローレシア大陸に牙を剥くか分かったものではない。ローレシア大陸の北4王国は様々な思或はあるものの同盟を結んでこれに対抗しているのだ。
そんな危うい中、私は父である王グリーン3世の呼び出しを受け、統一ラオスとの戦場である4王国の南の国ソドム王国の国境から帰都してきた。馬で帰れば3週間かかる道程だが、高位の魔法使いの呪文である転移(テレポート)で帰って来たので、この王城に着いたのはついさっきの事だ。先刻まではソドム特有の砂漠の風にさらされていた。いくら王族とは言え、このような呼び出しは異例である。私もソドムに向かった時は、馬に跨がり戦場に向かった。事態が緊急である事が赤子でも判る。その予想はある意味正鵠を射ていたし、想像を越える物だった。
私は父である王の前に膝まづく。例え、肉親であっても公の場に於いては、私は騎士にして将軍である。つまり臣下の一人である。「面をあげよ、我が子レジェンドよ」
父にして王であるグリーンは声を発した。謁見の間には主立った重臣や騎士団団長が勢揃いしていた。王の横にはいつも居るべき我が妹ローラが居なかった。ローラが生まれて直ぐに母は流行り病で亡くなった。近年はローラが王の横に付くようなったばかりである。
「レジェンドよ、王子としての場所に就け」
私は、壇の上に立つ。そして謁見の間を見渡す場所に立った。20数名の重臣が全員私に一礼を送る。中には大使として他国に行っているはずの者や私と共に統一ラオスとの戦争で別の戦線を指揮する騎士将軍の顔まである。
「では、はじめよう…。まずは遠方より馳せ参じた者達よ、礼を言う。折角、皆が顔を揃えたにも関わらず、宴が開けないのが残念だが、我が王国は建国以来最大の危機を迎えてしまった…」
そこまで言うと王は後は任せたと言わんばかりに最高宰相のハリババに促す。
ハリババは痩せた高齢の宰相で祖父である先代の王から仕えている。現在は最高宰相として王の相談役と後進の育成が主な仕事の男だ。とは言え、このような場所では彼の言葉が王の言葉だ。
「諸侯に於かれては、遠路より参じられお疲れの事と思われるが、王国の大事故、許されたい。こたびの召集は西のクライヒ郡の砦が落とされたが為である」
私も含め参集した一同が驚いた。西のクライヒ郡と言えば、同盟4国の国境が近く、統一ラオスとの国境からはかなり離れ、統一ラオスの侵攻とは考えにくい。すると同盟国の侵攻?謁見の間は騒然とする。王子である私も初めて聞く事態がである。臣下のものが動揺するのも無理はない。
「黙らっしゃい!我が話しはまだ終わっておらん!」
ハリババが一喝すると謁見の間は水を打ったように静まり返る。この老体に逆らえるような者はこの場に居る者で誰も居ない。王もこの老体に頭が上がらない部分もある。もっともこの場に居ない者でなら一人だけ知っているが…。
「諸侯らが心配する事態がは既に予想は越えておるわ!最後まで黙って聞いておれ!だいたい、今の若い者は、すぐに動揺しおって…」
ハリババの長い説教の始まる予感がした。この老体の説教は何時間でも続く地獄だ。私も何度も聞かされた。為になる話も多いが、今はそれどころではない。
「ご老体、ご立腹はもっともですが、今は話しの続きを…」
私は切り出した。
「そうでしたな、王子よ。すみませんでした。ついつい年甲斐もなく、熱くなっておりました」
全くだ。この老体はもう100近い。普通ならとっくに死んでいる年齢だ。しかし魔法使いが魔法を使っている訳でも無いのに、まだ初老に差し掛かった程度の容貌だ。我が父王の方が老けて見える。噂だと呪いだと言う者さえ居る。しかし飽くまで噂だ。
「クライヒ郡の砦が落ちたのは3日前。他国の侵略では無い!反乱じゃ」
一瞬どよめくもののすぐに静まる。流石に二度目は私でも止める事は厳しい。
「賊は魔法使いとその手勢じゃ」
一同は落ち着きを取り戻す。ローラ王国建国以来、その程度の危機は何度もあった。向こう見ずな魔法使いが反乱を起こす事は100年に一度位どの王国でもある。しかし騎士団や王国の魔法使いに撃退されるのが常だ。しかし、その程度の甘い事態では無い事に気付くのは次の言葉だった。
「賊は暗黒の魔導士カイザー。手勢はデミヒューマンを含めず5000」
一同は息を飲んだ。カイザーと言えば400年以上生きる最強の魔導士と呼ばれる男だ。既に扱う魔法は、前史、伝説の魔法帝国時代の超級魔法とも言われる。現在現存する魔法はその魔法帝国の遺産…と言えば聞こえはいいが、ハッキリ言えばガラクタに等しい。その男が5000の手勢を持って砦を落としたと言う事は、戦争を起こしたに等しいと言えよう。しかも魔法使いとなれば暗黒の住人とも言うべきデミヒューマン(亜人)どもを使役しているに違いない。その数は一体どれほどになるか想像も付かない。
「事態は更に悪い…。ローラ姫が、昨晩…賊の手によって奪われてしまった」
「なっ…」
私は言葉が出ないほど硬直してしまった。我が妹ローラはまだ14になったばかりの少女である。しかしその聡明さと生まれて持ったカリスマか、聖女とも言われる。ただ…実際は…
「直ちに討伐軍を編成すべきだ!」若い近衛騎士隊長が声をあげた。
「それで済むならこんな回りくどい事はせんわっ!愚か者!」
ハリババは声を荒げた。若い騎士隊長は完全に萎縮した。私と同じ位で近衛騎士の隊長に任じられる位だからかなり優秀なのだろうが、これは彼が悪い。何故ならクライヒ郡は同盟4国の国境地帯。下手に軍を編成して派遣しようものなら同盟にヒビが入る可能性すらある。それを考えてのクライヒ郡砦なのだろう。そのため各王国も国境にそれほど多くの兵を配置しない暗黙の了解があるのだ。
「が、お前に言われんでもそれを検討した」
ハリババの言葉は以外だった。有り得ない選択だったからだ。
「何故なら、この危機に直面しているのは同盟4国同様だからだ」
意味がよくわからない。たしかに、カイザーの反乱は同盟4国共に存亡に関わる大事だ。しかしそれだけで軍を派遣に繋がるとは言い難い。同盟が決して強固ではない証でもある。この機に乗じて他国を一気に侵略と言うことも充分に考えられる。それ故、ソドム王国と統一ラオスの国境に兵を派遣する際も厳密な取り決めが行われている。それを曲げてまで兵の派遣を検討したのだからただ事ではない。
「まず・・・地理的に見て我が国のクライヒ郡は4王国の国境に接しているだけでなく、皆が知っているとおり、4王国の続く街道の中心である・・・」
そのことは当然だが、私ですら折込済みだ。確かに軍は動かしやすい。ただ、軍が動かしやすいと言うことは、そのまま侵略にも繋がりやすい。それ故、我が国も、他の同盟国も砦は、国境の地区に設置しているものの兵自体は少数に留めているのが現状である。今回はそれが仇になっていることは私自身は充分理解している。
「4王国が一斉に軍を派遣すれば流石の伝説の魔導士殿も一溜まりもないであろう。4王国の王は昨日、それを検討したが・・・どの国も反対した。無論我が国も同様じゃ。」
当然であろう。現在4王国は統一ラオスとの戦争で大幅に兵を派遣している。しかも長期化した戦争でどの国もこれ以上戦争を抱えるのはその国の経済そのものを破綻させる可能性がある。ローラ王国からすれば姫を人質に取られている以上、性急な武力行使はできない。姫の命が危うい。
「が他の同盟国が派兵を反対したのも、我が国と同様の理由である。」
 謁見の間はハリババが何を言っているか分らず静まり返っていた。しかしその重大さが分ると誰彼無くとヒソヒソと声が上がる。ローラだけではない。4国の王族が人質に取られているとは予想外の出来事だった。だいたい王族を誘拐・・・それだけでも困難なことである。それを4国同時に行うとは至難の業である。流石伝説の魔導士である。4王国にしっかりと楔を打ち込んだ訳だ。恐らく各国の王族を誘拐したのは単独犯では無いだろう。つまりカイザー配下に手練の者が何人もいると考えた方が自然だろう。もちろんカイザーが魔法を使い一気にとも考えられるが・・・。
「そこで同盟4国の王たちは伝説の魔導士殿を打つための少数精鋭部隊を送り込むことを決めた。」
 妥当な解決策であろう。現在考えられる状況で一番的確だ。
「各国の最強戦士、魔法使い、神官、精霊使いを選抜し送り込むことになった、そこで我が国からは、3人の戦士と一人の賢者を送り出すことになった。」
 ・・・当然、我が兄王子がここに居れば当然選ばれたはずである。ローラ王国最強の剣士なのだから・・・。
「申し訳ございません、レジェンド王子を筆頭の三騎士にご出陣をお願い致します」
ハリババは私の方を向いて頭を深々と下げる。当然私は出陣のつもりだったので異論はない。三騎士とは私の心強い仲間である。よく気心も知れている。だが一人の賢者とは誰か心当たりもなかった。賢者と呼ばれる以上頭のいい者だとは直感的にわかるが・・・
「ハリババ、頭を上げてくれ。当然、私はローラを迎えに行くつもりだったから何も頭を下げる必要はないよ」
「しかし・・・王子に何かあったら・・・このローラ王国を継ぐ直系が絶えてしまいます」
ハリババは頭を下げたまま泣いているようにも見える。
「はは・・・私に何かあったら兄上も帰って来てくれるだろう。それに兄上が帰らなくても王弟閣下もいらっしゃる。直系が絶えるくらいで潰れるような国は、どの道滅んでしまう運命だよ」
そう言うとハリババは、頭を勢いよく挙げた。
「あの馬鹿の話はするなと言っておろうがっ!!既に国王閣下も彼奴の王位継承権を取り消しておるわっ!!」
と言い切って周囲を見て咳ばらいをした。この最高宰相が私を子供扱いすることは周知の事実である。それを咎める者も居ないのだが、流石にこの場では不味いと思ったのだろう。
「レジェンド殿下!!私もご同道をお願いしたい!!」
先ほどの若い近衛騎士隊長だ。ハリババが何か言おうとしたがそれを遮り私がその騎士に反論した。
「それは出来ません。これは同盟国と我が国の国王陛下の決定です。それを覆すことは誰にもできません。それとも貴方は、国王陛下の命令も破り、近衛騎士としての国王陛下を護る役目も投げ出すと言うのですか?それは騎士としての誇りも捨てるということですが・・・」
若い騎士隊長は顔を真っ赤にしてしていた。それでも行きたいと言う気持ちもあるのでしょうが、それには彼の家族を路頭に迷わせるだけでなく、彼の領民も明日以降どのような暮らしになるか分らないと言うことである。
「貴方は、貴方の役割を遂行することで王国を護りなさい。それが近衛騎士の役目です。そして私やローラの帰る場所をしっかり護って下さい」
そう言うとハリババと父王に合図した。これ以上は混乱を招くだけだと。素早く閉会すべきだと感じたからだ。
「皆の者、これは旧ローレシア王国はじまって以来の危機だ。皆の力を私やハバリア老に貸してくれ。また詳しい話は近日中に行う。戦時中故、贅沢は出来ぬが今宵は細やかな宴を用意する。そこで身体を癒してくれ。ひとまず解散とする!!」
グリーン王はそう宣言すると玉座の裏にある私室へと続く通路へ向かった。それに最高宰相ハバリア、宮廷魔術師トキワ、そして私が続く。そうこれは同盟4王国と伝説の魔導士カイザーとの戦争の始まりであった。
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